モカニズム+

趣味全開でゲーム、音楽、映画などのレビュー、旅行やライブレポを書いていきます

MENU

【レビュー】ばかうけ型UFOの登場する『メッセージ』神秘的で興味深いけど共感できなかった

こんばんは、白乃もかこです。


今回はちょっと久しぶりに映画のレビューを書きたいと思います。

見てきたのは、5月19日(金)より公開されているドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による映画『メッセージ』
f:id:shiro_mokako:20170521180739j:plain
公開前からこのポスターの謎の物体(=宇宙船)がばかうけに激似とかなり話題になっていました。

栗山米菓 ばかうけ青のり 44枚入

何度見てもばかうけにしか見えないです。おいしそう。


最初知ったきっかけはばかうけだったんですが、予告編なども見ると結構おもしろそうだったので、
珍しく公開初日に見てきました。


ちなみに、ばかうけに似ていると話題になったあと、監督自らノリノリで

「ご推察の通り宇宙船のデザインは”ばかうけ”に影響を受けた。本当だよ」と言っている!ノリ良すぎだろ!!

映画『メッセージ』特別映像 ハリウッド新巨匠が”ばかうけ”からの影響を激白!

もちろんジョークだそうなんですが。好き。


ストーリー


映画『メッセージ』本予告編


テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」が原作となっていますが、小説と映画とでは展開等が若干異なるようです。
(ちなみに私は小説版は読んでいません)。


突然地球のあらゆる場所に現れた12隻の巨大な「ばかうけ型」の宇宙船。
それを操る宇宙人(ヘプタポッドと名付けられる)がなぜ地球にやってきたのか探るために、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)と数学者のイアン(ジェレミー・レナー)はアメリカ軍に雇われ、彼らとの接触を試みます。

苦戦しつつも彼らと次第に意思疎通を図れるようになり、最後に彼らが何を伝えようとしていたのかを知るルイーズ。

彼女が知るものとは果たして何なのか・・・最後には驚くべき展開が待ち受けています。


感想

※以下若干のネタバレを含みます。

まず初めに、この映画は突然地球に現れた宇宙人を倒すために、宇宙人vs人類みたいなドンパチ映画ではないです。

そういったものを想像して見に行くと期待外れでがっかりするかも。



何か一番印象的で面白かったかっていうと、宇宙人と人間のファーストコンタクト


荒野に若干浮いた状態でそびえている巨大な一枚岩のような不思議な形態の宇宙船。
(どんなに集中しようと思って映画を見ようとしてもばかうけにしか見えなかった自分が辛かった。

雅楽のようなぶわーーーーーんというBGMは映画館の大音量で聞くとめちゃくちゃ不安な気持ちに駆り立てられます
不快というか、怖いというか、心がざわざわする感じでちょっと苦手。

だけどこの音楽の効果によって、映画の登場人物たちが抱く未知の生物との接触を図る不安感にぐーっと接近させられます。
これがなんともすごい。
実際、アカデミー賞では「音響編集賞」を受賞していたそうです。とっても納得。


宇宙船への入り方は何ともSFっぽくてドキドキさせられるし、
宇宙人何言ってるのかうめき声みたいでさっぱり分かんないよどうすればいいんだー!とか、
どうやって意思疎通を図ればいいんだー!とか、一気に感情移入させられます


そして文字を使っての彼等との意思疎通の糸口が見え始めたとき、見ている側も達成感を味わえます。

また、宇宙人ヘプタポッドの使う文字、ヘプタポッド文字もなんとも神秘的
まるで書道家のような、アート性があります。


ていうか宇宙船もヘプタポッド文字もあんなに神秘的な形態をしているのに、
なぜか等のヘプタポッド自身はかなーり古典的な形態をしています・・・なんだか残念w


彼らがどんな目的で地球へやってきているのか気になり、時間が気にならないくらいあっという間に物語が進行していきます。


が、彼らの目的が分かる前後からラストまでは、どうにも展開が早くて、意外性も大きくて、ついていくのが大変だったのは私だけではないのではないでしょうか・・・


そして、ヘプタポッドと接触していくうちにルイーズにある変化が訪れるのですが、それを全て受け入れようとする彼女にどうしても共感ができませんでした。
途中はすごい面白かったのですが、最後でもやっとしてしまい、でも改めてあれはどういうことだったんだろう、何を伝えたかったんだろう、と終わってから考えてみるとやっぱり興味深くて面白い、そんな映画でした。
ただ、やっぱり私は共感はできないんですけどね。


SF的な世界観が好きな人には是非とも一度見てもらいたい映画です。


考察と感想(ネタバレあり)

※以下ネタバレを含みます。


ヘプタポッドの目的

予告編では「武器を与える」となっていましたが、このヘプタポッドの回答が原因で、世界中の調査団はヘプタポッドを
「人類に争いを引き起こそうとする宇宙人は信用できない」として攻撃態勢に移ろうとします。

実際に与えようとしていたのは「武器」ではなく道具としての「ヘプタポッド文字」でした。


また、ヘプタポッドは人類とは異なる時間の捉え方をしており、過去・現在・未来という複数の時間軸を同時に捉えることができるそうです。
3000年後にヘプタポッドに危機が訪れ、その時に人類が救ってくれるということを彼らは既に認知しているため、
前もってヘプタポッド文字を人類に伝えに来ていたようです。

わざわざ12隻で訪れ、12分の1の情報を与え、協力しなければ全容を掴めないようにしていたのは、人類に一つにまとまって協力してほしいという彼らの思いが込められていたのかもしれません。


「サピア・ウォーフの仮説」

ヘプタポッド文字を解読するにつれてルイーズはヘプタポッドと同じように過去・現在・未来を同時に捉えられるようになります。

これは「サピア・ウォーフの仮説」という、言語が知覚のあり方をかたちづくるという考えに基づいているそうです。
外国語を勉強すると物の捉え方が変わる、ということですね。

私はそこまで外国語に精通しているわけではないので実際に知覚の在り方が変わった!なーんて体験はないんですが、
逆に外国語に比べて日本語は自然を表現する言葉が単語としてとっても多いなぁと思うことがあります。


この言語表現の違いが、日本人と外国人の四季の捉え方の違いを生んでいると聞いたことがあったので、かなり納得感がありました。


そして自身の時間の捉え方の変化をルイーズが明確に意識することによって、ルイーズは人類vsヘプタポッドの対立を止めることができ、
観ている側も今までずっと「過去の回想」だと思っていた「ルイーズと娘との出来事」は「未来に起こること」だと分かるのですが・・・


非常に興味深い設定であり、この映画の面白い点となるのですが、同時に私的にはこれが、『メッセージ』を共感できない原因にもなってしまいました・・・



ちなみにヘプタポッドが与えたかったのは『ヘプタポッド文字自体』なのか『ヘプタポッド文字を理解することによって身に着けられる時間認識力』なのか、どちらだったのでしょうか。
私的には後者(そうでないと3000年後いきなり来られても人類はどう助けてあげればいいのかわからない)だと思うのですが、
同じくらいヘプタポッド文字の解読に力を入れていたイアンには時間認識能力を身に着けた兆候が見られないため、適性もあるんですかね。

3000年後、ルイーズのヘプタポッド文字を解説した本を読んだ適性のある人がその能力を身に着けて助けてあげるんでしょうか。


何が共感できなかったのか


「ルイーズがこれから生まれる娘の人生をすべて受け入れているかのように思えるところ」です。

ルイーズの娘ハンナは若くして将来「強い」病気にかかって亡くなってしまいます。

それを知った上で、かつ受け入れた上で、ラストで子供を作る選択をしようとしています。

途中の「未来の」シーンで、ハンナが若くして死んでしまうと夫のイアンに伝えたことが原因で彼と離婚したと語っています。
つまり、未来のルイーズもハンナが死んでしまうことを分かった上で彼女を育てていることが伺えます。


通常は、悲しい未来を知っているのなら、それを避けたい、運命を変えたい、と思うのではないのでしょうか。
私だったら間違いなく、運命を変えるべく行動すると思います。


しかし映画のラストからはそれは感じられず、彼女が捉えた未来をただ運命として受け入れているように思えました。



もう一度映画を見れば、もしくは原作を読めば、もう少し私の考え方も変わるのでしょうか。